
第一回、ダイヤモンドザイ、浜辺編集長ロングインタビュー
第二部
会社には人格が!?
で、ダイヤモンド社に入られたと。
最初はダイヤモンド社でキャリアをデザインする雑誌を創刊するってことで入ったんですね。今後、終身雇用が壊れるとしたら、自分のキャリアをデザインしなきゃいけない時代になるだろうと。これからは就社じゃなくて就職だと。自分が何ができるかで稼ぐ額が決まる。それって健全な話じゃないですか。
いい会社に入りこんで、そのままなんとかミスさえしなければ最後には退職金いっぱいもらって、企業年金もいっぱいもらって幸せ。でも、それってダサイ幸せですよね。そういう特殊な幸せしか日本にはなかったんですよ。
そうじゃなくて、自分の腕を買ってもらって、腕が上がれば仕事が増えて給料が増えて、だからみんな腕を上げようと必死になる。そういう社会の方がいいんじゃないかと。そのためにキャリアをデザインするという雑誌を作る、それってなかなか面白そうだな(笑)ということで転職したんです。
なるほど、よくわかりました。
その雑誌での連載をまとめたのが『会社図鑑!』という本です。自分でいうのも変ですが、これが面白いんです。これは今でも就職本として毎年ずーっと続いているんですけどね。仕事と会社をミシュランしましょうって内容なんです。
ミシュランですか?
例えば、銀行だったら、銀行員になるっていうことは一体どういうことなのか? 銀行員の一人前の条件は? それをどうゲットしていくのか? ということなどを解説したんです。
それからその本に会社の人格ってコーナーがあって、これがなかなか面白くて・・・(笑)。
会社の人格ですか?
はい。会社には人格があるんです。例えば90年代の中頃の話ですが、住友と三菱って同じ銀行でも全然性格が違ったんですね。そこでマトリックスを作って、十字の中に保守的で官僚的な会社が右にきて、アグレッシブで攻撃的な会社が左に来て、縦軸は上は偉さ、下は駄目さといったような図を用意しました。
面白そうですね(笑)。
例えば銀行業界で言うと、興銀は当時「腐っても興銀」と言われてて、偉さではトップでそして官僚的な会社の代表でした。これは右上です。で次に三菱がいて、住友は上の方でしたけど非常にハングリーでアグレッシブで・・・。だから、左の方ですね。その体質がバブルとその崩壊、そしてその後の大変な問題につながっていったわけです。
で、三和もマトリックスで言うと左寄りでしたね。出身が関西でしたから、そういった銀行がアグレッシブな方にいるのは理由があったんです。首都圏に進出したくても、当時は大蔵省の厳しい行政指導で自由に支店も出せなかったんですね。だから変な奇策を使うしかなくて、ATMだけの店舗をやたらにたくさん作った三和とか、住友は無理な買収をしたり…。
だからそういう無理がたたって、その後の戦いでの勝敗が、そこで決まっちゃったみたいなところがあったわけです。つまり、会社には何十年、下手したら100年前から続く背景があり、その背景に裏打ちされたビジネス界でのキャラクターがある。そういったことは業界内部の人間はみんな知ってることなので、例えば、銀行編では銀行員120人くらいにアンケートしてあぶり出しました。
す、すごい。
例えば当時、当時ですよ。某D銀行のことを銀行員たちはなんて呼んでたか知ってます? みんな「デクノボー」って呼んでたんですよ。
デ、デクノボー?
ひどいでしょ。『D○○』だからデクノボーなわけです(笑)。で、非常に馬鹿にされてたんです。大きな案件だといつも最後の最後に協調融資で入ってきて、で、潰れそうになっても協調だから抜けられないという、そういう間抜けなキャラだよね、ってことを銀行員たちはみんな言っていたわけですよ。でも世間の人は知らない(笑)。
知りませんよ、そんなこと(笑)。
その『会社図鑑!』の後に『大学図鑑!』ってのも作りました。大学にも人格があるんだという同じ考え方の本です。つまり、偏差値教育ってのも裁量行政によって守られた護送船団方式の延長線上にある問題なんですよ。
おっと、油断するとすぐ話が難しい方向に(笑)。こちらもマーケットの話につながりますか?
もちろんです。終身雇用制だから、ほんの数回の面接で一生面倒見るみたいな異常な採用になる。そうすると、もともと「人間としてどうかを見る」なんて非効率なことをしてられないわけだから、偏差値の高い学校に入れるような奴は会社員としてとりあえず無難だろうという、一種のスクリーニングとして機能させてきたんですよ。
東大出ているやつ採っときゃ、ま、大体間違いないと。そうじゃないと30年契約で採るわけですから、変なの採っちゃったら後々大変なことになるわけです。だから偏差値って便利だったんですね。だって1回や2回の面接で分かるはずがないじゃないですか?
その人がどれだけ仕事ができて、だからいくら払う、じゃなくて、30年つきあえる人を保守的に選ぶ、と。だから偏差値ヒエラルキーっていうのを考えることで日本の社会のありようを見つめ直せるんじゃないか? そういう視点から大学を見るというのが『大学図鑑!』なんです。
読まなきゃ(笑)。浜辺編集長、面白いこといっぱいやってますね。なるほど、そういったことも先ほど編集長がおっしゃってた問題につながるわけですね?
そうです。今まで日本の産業界は、間接金融で銀行に支配されていてマーケットが機能していないということが全ての背景にあったわけです。
だけど、このままでいいはずはないから、これからはマーケットが機能していくんじゃないの? というか世界中から、させなさいって言われるんじゃないの? だから、マーケットはこれから変わる。マーケットが変わるってことは投資家も変わらなきゃいけないですよね。
ところで投資家向けのメディアって日本にありますか? ありませんね。だったら僕が作りましょうとこういうことなんです(笑)。
今、全部つながりました(笑)。すごい話ですね。
iに愛があるんです!
ところで話は変わりますが、『ザイ』って名前は誰が考えられたんですか? 『ザイ』というのはやはり“財産”の“財”からですか? 意外と、“材料”の“材”とか、「ここに在り」ってことで“在”だったりするんじゃないかとか。
これだけの雑誌ですからいろんな意味が含まれてるんじゃないかと。ひょっとしたら裏には『罪』という意味まで隠されているかもしれないなんて、色々と考えると気になって(笑)。いつ、どういう風にして決まったんですか?
謎ですね(笑)。謎です。今となっては誰が言ったのかすらわかりません。仮題はダイヤモンドマネーだったんですね。でもそれではあまりにストレートだからひねったのはないのか、と。で、みんなでああだこうだ言って、万策尽きてぐたーってなっていたんですよ。
そのときに誰かが小声で、「『ザイ』ってどう?」ってつぶやいたんですよ。そしたら誰かが、ねぼけまなこで、「あ、『ザイ』いいかも、カタカナで『ダイヤモンドザイ』、あ、それいいかも」というような決まり方だったんですね。(笑)
なるほど、ぐたーっとした後にいいアイデアが出るもんなんですね(笑)。それと・・・気になってたんですけど、『ZAi』の最後の「i」が小文字になっているじゃないですか? あれは何故なんですか?
これも何か、深ーい意味が隠されているようないないような・・・『The internet』とか、『The investment』とかの略じゃないかと、そう考えると、気になって夜も眠れない(笑)。
あ、これ?これは・・・意味はありません(笑)。僕は論理的思考よりも、視覚からパターン認識で考えることの方が多いんですよ。
小文字の「i」がかわいい。感じがいい。これが全てです。大文字にすると感じが悪いんですよ。この「i」に愛が感じられるんです(笑)。これもし大文字の「I」だったらつまらないですよ。きっと売れてないんじゃないですか。
なるほど、デザインですね。ザイは本当に全体を通してデザインも素晴らしいんですが、そこらへんも特に意識されたところですか?
そうですね。デザインも含めてですが、今までの金融メディアとは全然違うものは出来ないのか、なんか面白く、なんかこう元気が出るようなものが出来ないのか、ということはずっと考えていましたね。
だから2000年3月にこの雑誌がスタートしたときには衝撃的だったと思うんですよ。今までのこの業界の雑誌とは全然違ってましたからね。 だってライバル社の週刊東洋経済がですよ、今年のヒット商品、雑誌部門年間ランキング第1位に入れてくれましたからね。ライバル社がですよ。それくらい業界で話題になったんです。すごいでしょ?
すごすぎです(笑)
今は、表面的にはうちみたいなデザインの雑誌がいっぱいありすぎで・・・(笑)。
トップ走者は常にマネされますからね。編集長は他のマネー誌は読まれてました?
マネージャパンっていう歴史のある雑誌がありますよね、今はもう見る影もないですけど、最初はすごくいい雑誌だったんです。で、僕はザイの創刊準備をしているときに国会図書館に行って、創刊号から全部ちゃんと読んでいるんです。その後に日経マネーが出て来て、「日経さんまたマネですか」って感じでマネージャパンを追っかけてきて、というのが80年代の終わり頃の話だということも勉強しました。
おっとまたまた辛口発言が・・・(笑)
いや、もちろんその先人達を尊敬していますよ。尊敬しているから言えるんです(笑)。特にマネージャパンの最初の方の号は面白かったですね。売れてたですし。
そうですよね。
バブルの最盛期に邱永漢さんが出てきて「株はもっと上がる!」とか言って、その後突然消えていなくなって(笑)、91年、もう1回邱永漢さんが出てきたんです。そして「これからは土地だ!」って言ったら、そこが地価のピークになって(笑)。
それからマネー誌全体、落ち込んで、それからどんどんどんどん元気がなくなってつまらなくなっていったというのを、全部読みました。だからこそ、全然違うものを作ろうと思ったんです。
なるほど。(以下、第三部に続く)
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そのほか、こんな時こそ頼りになるかも、の「金」投資や 投資の損で傷ついた(?)自分の資産を どう管理するのがいいかがわかる「試算管理術」など 暗くなりがちなイマをどう乗り切るかの知恵が満載! 「創刊9周年記念」のザイ5月号、必読です。
2008年10月

株式会社ダイヤモンド社浜辺 雅士(はまべ・まさし) ダイヤモンド・ザイ 編集長
奈良県出身43才、明治大学文学部卒。
マガジンハウスでライター見習い後、某主婦雑誌会社に就職。育児漫画シリーズでブームを作る。
1994年ダイヤモンド社に転職、2000年3月『ダイヤモンド・ザイ』の創刊に参加し、全く新しい発想で日本一売れる投資雑誌に育てる。02年4月より編集長として現在に至る。

